そんな顔すんなよ
凉菜の肩がビクッと震える。山西が俺を指差す。ゆっくりと凉菜が振り返る。
「……ど、してココに」
「もう出発するんだ?」
「う…ん」
「夕方に出発っていうのは嘘だったのか?」
「…急に早まっちゃっ…」
「どうして、嘘ついたんだよ」
凉菜が黙る。山西達が気を利かせて俺達から離れた。
「……だって、引っ越す前に優輔と会うと…」
そこまで言うと、俯いていた顔を上げて俺を見た凉菜。
「うふふっ、あたし…笑っちゃうんだもん!」
そして、ニコッと笑った。俺は、凉菜の予想外の表情に戸惑いを隠せない。
「……は?笑う?」
「うん!優輔が心配そうにする姿に笑っちゃうの。ただの引っ越しだよ?死ぬ訳じゃないんだよ?」