そんな顔すんなよ
少しずつ俺から視線を外す凉菜。だけど、笑っている顔が崩れることはない。
俺は、お前のそんな顔が見たいんじゃない。
「あれ?泣いてるとでも思っちゃった?あたしは全然…」
「そんな顔すんなよ」
我慢の限界が来てしまい、凉菜を抱き締めた。
「な、に?」
「お前のそんな顔、見たくない。強張った笑顔なんて大嫌いだ」
お前が大嫌いなんじゃない。今の笑顔が嫌なんだ。
「そんなにブサイクな顔?」
「あぁ。今までにないくらい」
「困ったなぁ。最後にそんな顔を見せちゃうなんて、あたしもまだまだ修行が足りないね!」
「凉菜、真面目に答えろよ」
「あたしはいつだって本気なんだよ。言葉も優輔への気持ちも…」
凉菜の両手が俺をゆっくりと引き離す。それに合わせて、俺も腕の力を緩めていく。