そんな顔すんなよ
何、勝手に決めてんだよ。言葉にならない虚しさを抑えきれずに、手紙をぐしゃっと握りしめる。
「山西、ケータイ持ってるか?」
「持ってるけど…藤島くんも持ってるでしょ?」
「凉菜の引っ越しが今って聞いて慌てて出てきたら…家に忘れた」
「クスッ…だろうね。スリッパと靴を履くくらいだから」
ほら見てみなよ、と足元を指差された。あ……本当だ。俺は右足にスリッパ、左足にはなんと母さんの靴を履いていたのだ。
「藤島くんの愛が伝わるー!」
「よっぽど慌てたんだねっ」
山西の後ろにいる他の女子がキャッと騒ぐ。うるせーよ。
「ハイ。電話代は請求するわよ」
「……ひでー奴だな」
「だって長電話でしょ?」
渋々、山西のケータイを受け取って凉菜へ電話をかけた。