そんな顔すんなよ
素直になろう
ケータイを持つ手が震える。プルルル…1コール、2コール。
『……もしもし』
5コール目で凉菜が出た。心臓の高鳴りがヒートアップする。
「もしもし、俺」
『……優輔?な……んで』
「誰かさんが昼に引っ越すって聞いて、慌てて家を出たらケータイ忘れたわけ」
あと、スリッパと靴をセットに履いたんだっつーの。
「なぁ、さっきの何?」
『な…何が?』
「車に乗る前の史上最高にブサイクな顔」
『それは…』
「それだけじゃない。あの手紙の理由は何?それに、なんでマスコットも返すんだよ」
聞きたいことがありすぎて、凉菜の答えを聞く前に溢れ出てしまった。
「……まさか、別れたいとかじゃないよな?」
そして、言いたくなかった言葉を吐き出した。