千年の追憶【完】
振り返って私を抱きしめている腕の主を見上げた。


間違いない。


お姿は人ではないけれど、早時様だ。


私はおそれ多くて、すぐに絡みつく腕から逃れ頭を下げた。


「早時様。申し訳ありません。このような御無礼を。」


「都。お前は今、都だよ。
屋敷の使用人ではないんだ。
対等でいたい。
頭を上げてくれ。」


そうか。


私の名前は“友瀬 都”だった。


水菊は過去の名前。


思い出した。


水菊だった時の事。


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