千年の追憶【完】
「止めて下さい。
都を離して下さい。」


早時様は眉間を歪めた。


「…水菊だ…。
俺の腕の中に居るのは水菊だ。
…俺の水菊だ。」


静かに。


でも、力強く。


まるで自分に言い聞かせているかのよう。


そして両手で私をギュッと抱きしめる。


息が出来ない程に。


早時様の、水菊を求める想いが、この腕の強さに込められている気がした。


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