千年の追憶【完】
早時様は、俯いてしまった。


やっぱり正直に言うべきじゃなかったのかな。


「勿体ないと思うなんて…。

ずっとその主従関係が悔しかった。

どうしたら主人としてじゃなく、俺を見てもらえるのか。

羽琉と対等に、見てもらえるのか。

どうやったら水菊の全てを手に入れられるのかと…。

俺は、本気でお前を妻にしたいと思っていたんだ。

その矢先に子ができて、どれほど嬉しかったか。

でも水菊は、逃げてしまった。

水菊を殺したのは雪路じゃなくて、俺だったのかもな。」


早時様は俯いたまま、独り言をいうように呟いた。


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