千年の追憶【完】
私は、そんなタケルに意地悪な笑いを返して、ちょこっと舌を出した。


そして黙って私の話を聞いている、早時様の瞳をしっかりと見つめる。


「早時様が欲しい水菊は、やはり居ません。
私は水菊では、いられません。
でも都としてなら…。
早時様が私を、都として見てくれるなら。」


少し、私はためらう。


「私は早時様を、好きになれると思います。」


あの頃の水菊の記憶が語る早時様なら、私は早時様を大好きだ…。


優しくて、ご立派で、何より誠実で。


調子よすぎかな。


でも、水菊の記憶を持っちゃったんだもん。


早時様を、知っちゃったんだもん。


私、翻弄されてるね。


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