千年の追憶【完】
早時様に纏う空気がわずかに揺れた気がしてほどなく、私から早時様の手が離れた。


「俺の望みは叶えられた。」


そう言うと早時様は立ち上がり、満たされた表情で瞳を閉じた。


「その言葉が聞きたかった。
この時を待ちわびた。」


突然、私の目の前でサラサラと音をたてて、早時様の体が砂になっていく。


美しく妖艶な鬼が消えていく。


「早時様!?」


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