千年の追憶【完】
外はまだ、雪がチラチラと舞っていた。


田舎の小さな町。


学校の近くの公園とも空地ともいえない、池のある広い空間。


その昔ここにはお屋敷があって、この町じゃ有名な何とかっていう若様が、治めていたらしい。


今はただ、古びた祠があるだけ。


その祠の前で、私は彼に捕まり、ギュッと抱きしめられた。


「何で逃げるの?俺の事嫌い?だとしても、逃げるなよ。」


痺れるような甘い感覚。
懐かしい温もり。


…懐かしい?


慌てて私は、鹿住くんの腕から逃れようとした。


「離して!」


「何で?
やっと見つけたのに。
水菊(みなぎく)。」


見つけたって何?
水菊って誰?


「もう!何言ってるの!
離して!意味分かんないし!」


鹿住くんは、少し悲しい顔をして、ゴメンと言って離してくれた。

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