千年の追憶【完】
「本当に分からない?
水菊…。
いや、都と言ったっけ?」


「あなたは私に関わっちゃいけないの。
それに、気安く名前で呼ばないで。」


「俺は千年待ったんだ。
今度こそ諦めるつもりはない。」


「だから!!意味分かんない!
何なの?さっきから!」


「俺だよ。早時だよ。
関わっちゃいけないなんて…。その台詞が出るって事は、何となく分かっているんだろ?」


鹿住くんは、その美しくも妖しい顔をふっと曇らせて、私を覗き込んだ。


鹿住くんが教室に入って来た時から感じていた不思議な感覚。


私を覗き込む鹿住くんの姿を今、懐かしいと思ったこと。


鹿住くんが女子達に囲まれている光景を、少し離れて見守るのが自分の立場だと思えること。


私は多分、何かを知っている。

この人のことを。


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