千年の追憶【完】
積もる程降ってはいない。


花びらのように舞う、真っ白い羽毛のような雪。


私は傘もささず、トボトボと歩いていた。


不意に目の前の雪が舞わなくなった。傘だ!


「今帰りか?
今日は早いんだな。」


お隣に住んでいる、幼馴染みの大好きなお兄ちゃん。


「あぁ…。タケル…。」


年上なのに、何故か昔から呼び捨て。


背が高くて、切れ長のクールな目元が印象的。


口数は少ないけど、とても優しいの。


「何だよ。俺見て、そんなガッカリしなくてもいいだろ?」


タケルは不貞腐れて見せた。


私より、三つ年上の大学生。
今日は休みだったのかな。


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