千年の追憶【完】
ほのかに暖かさを感じて、そっと回りを見渡した。


木で出来た少し朽ちていた小さな祠が、甦ったようにそこにあった。


寒かったはずの池の畔に、野の花が咲き、緑にあふれている。


木々も葉を生い茂らせ、数本そびえていた。


土と緑の匂いが、私の鼻をくすぐる。


「ここは都が、水菊として生きていた時代だよ。
時間を動かした。」


「………?」


すぐに理解するには、私の思考力では無理があった。


しばらく押し黙り、辺りの様子を伺う。


とりあえず、落ち着こう。

< 44 / 203 >

この作品をシェア

pagetop