千年の追憶【完】
早時様は私の肩から手を背中に移動させて、私を胸に引き寄せ強く抱きしめた。


「は…早時様!」


私は腕から逃れようと両手で抵抗したけど、余計に力強く抱きしめられてしまう。


「私のような使用人にこのような戯れは、お止め下さい。」


「戯れなんかじゃない。
俺は、初めて会った4年前からずっとお前だけを見ていた。」


早時様の声が微かに震えている。


耳元で囁くように語る。


「水菊が12歳で家の屋敷に来たとき、運命だと思った。
両親を亡くして泣いていたお前を、俺は…たまらなく愛しいと思ったんだ。
羽琉は俺にとっても、大切な存在だ。
でも、お前を渡したくない。」

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