千年の追憶【完】
早時様の綺麗な瞳が私を見つめる。


「水菊、泣かないでくれ。
俺のこと嫌いか?」


私は、ふるふると首を横に振った。


「嫌いだなんて…。
早時様のことは、とても尊敬しております。
拾っていただいた大恩あるお方です。
感謝してもしきれない、私には勿体ないお言葉です。
私なんかにこのような…。」


言い終わらないうちに、また私の唇は早時様の唇で塞がれてしまった。


今度は私は、早時様からすぐに顔を背けることができた。


俯きながら、私は言葉を続けた。

「私は単なる使用人にすぎません。
早時様には、たくさんの身分ある姫様がお近づきになりたいと、お見えになります。
私などにかまっていては、早時様のお立場が汚れてしまいます。」


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