千年の追憶【完】
白み始めた東の空。


黒かった池の色が、少しずつ透明に変わっていく。


自分の気持ちに答えを出すのが怖かった。


この屋敷で過ごした四年間の心地よい時間を、壊してしまいそうで。


「…。おい。」


静かに声をかけられてびっくりした。


ハッと顔を上げる。


目の前には見慣れた涼しい顔。

こんなに近くに来て、声をかけられるまで、全く気付かなかった。


私の様子を察したのだと思う。


「お前…。」


羽琉は泣きそうな表情で、そっと言った。


「お前の部屋から、早時様が出て行くお姿を見かけたんだ。」


「…そう…。」


私は、消えて無くなってしまいたい気持ちだった。


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