千年の追憶【完】
羽琉はもう気づいたわね。


羽琉も早時様にお仕えする立場。


どうすることもない。


早時様に従うだけ。


私は早時様のお気持ちに、どうお応えすれば…。


美しくお優しくご立派な早時様に、憧れの気持ちがあったのは確かよ。


あんな事があった今も、その気持ちに変わりはないわ。


でも、それは好きとは違うの。


昨夜それを、思い知った。


私は、目の前で悲しい顔をしているこの人を、いつの間にか…好き…。


…認めるしかないよね。


気づかないふりは、もうできないよ。


羽琉はこんな私を哀れんで、軽蔑しているかしら?


また今までのように、笑い合えるのかしら?


でも汚れた私には、羽琉を好きでいる資格なんて、もうないわね…。

< 82 / 203 >

この作品をシェア

pagetop