千年の追憶【完】
そっと。


本当にそっと。


早時様は壊れ物を扱うように、私のお腹に触れた。


「ここに、俺の子が?」


早時様の吸い込まれそうな瞳が、少し潤んでいるよう。


早時様の喜びが、痛い程に伝わってきて…。


私は目を反らし俯いた。


「なんですの?
どういう事なんですの?」


殺意にも似た空気が、辺りを包んだ。


雪路様の美しいお顔が、怒りに震える。


私は恐怖で、顔を上げる事すらできなかった。


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