千年の追憶【完】
「説明しなさい水菊。
あなた使用人の立場を分かっていますの?
早時様の優しさにつけこんで!
あさましいですわよ!」


いつも穏やかな雪路様が別人になってしまったかと思うほど、怒りをあらわにした早口だった。


「…早時様に抱かれたの?
あなた早時様と肌を重ねたの?
どんな手をお使いになったのよ?
あなたみたいな使用人が!」


「止めないか雪路!」


泣きそうな表情で下を向き、必死に雪路様の罵声に耐えている私を庇うように、早時様は雪路様をいさめた。


私は、その場に崩れ落ちそうな程に、足が震えていた。

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