千年の追憶【完】
夜、月明かりを頼りに屋敷を抜け出した。


行く宛てはなかった。


私の足は勝手に、あの池の畔に向かっていた。


静かに佇む祠。


何が、誰が、奉ってあるのか、実は知らない。


だけど近くに居ると、妙に落ち着く祠なの。


夜の池は月を水面に映して、鏡のようだった。


しばらく私は、水面に見入っていた。


不意に水面に影が映り込む。


私は、振り向いた。


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