千年の追憶【完】
そこに居たのは…。


「雪路様!」


私は、悲鳴をあげるように雪路様の名前を呼んだ。


冷ややかな瞳が放つ、刺すような視線。


「水菊。
よくも出し抜いてくれたわね。
いつの間に早時様に取り入ったのよ。」


いつもの穏やかな口調だけど、泣きそうな程トゲがある。


「取り入ったなんて、そんな。」


「早時様はあなたを愛していると、妻にしたいと、そう言っていらしたけど、一時の気の迷いなの。
お分かりになるでしょ?
あの方のお側に居ていいのは私ですのよ。」


「…はい。」


私は、恐怖で返事をするのがやっとだった。


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