モウイチドキミニアエルナラ…

叶「昴？どっか行くの？」
『ああ、ちょっと学校に寄ってから行くよ』
別に用なんてなかった。
ただ、なんとなく行きたくなった。
そういえば、学校に行くのは何ヶ月ぶりだろう。
今の時間からみて、残っているのは部活がある生徒だけだろう。

ただ、なんとなくだった。


『久しぶりだな。やっぱなんも変わってねえ。』
昴は学校に着き、自分の教室へと向かった。

『………？』
教室に誰かの気配がした。
きっと、部活生が忘れ物でもして取りにきたのだろうと思った。

ドアを開けると、教室には昴が決して忘れることのない人が立っていた。

『…っ、奎？』
すると、下を向いていた少女が顔をあげた。
彼女は腰あたりまでの薄い黄緑色の髪に片目が黄緑色で片方が灰色というオッドアイだった。
彼女の名前は《三葉 奎（ミツバ ケイ）》。
彼女は、色の異なる目を大きく開けた。

奎「っ昴!!」
彼女はそう叫び、昴にすごい勢いで抱きついた。
昴は少しよろめくが、ちゃんと奎を受けとめた。

昴は少し驚くが、久しぶりの奎独特の匂いにとても落ち着いた。
しかし、昴は奎が手に持っていた物と奎のいた席を見て驚いた。

奎の持っていた教科書はズタズタにされ、水で濡れていて、使い物になりそうになかった。
奎の席には、たくさんの落書きなどがされていた。
よく見ると、奎の体のあちこちに絆創膏やら包帯やら巻いていた。

これは誰がどう見たってイジメだった。
彼女は、昔からオッドアイのせいでイジメられてきた。
昴がそばにいた時は、みんなは何もしなかった。
しかし昴が荒れて、学校に来なくなってから又、奎はいじめられはじめた。

昴はそれを見て怒りをあらわにした。

『……泣きたかったら泣きなよ。我慢してるともっと辛くなるよ。』
奎「ふっ、ふぇっ、ふぇぇぇぇぇぇぇっ」
『…ゴメン、ゴメンな。独りぼっちにして。、ゴメン…』
彼女は学校でも家庭でもいじめられていた。
頼れる人が昴しかいなかった。



夕陽が彼女達を照らした。
そしてフワリと風が吹き、カーテンを揺らした。