30才の初恋

30才の初恋

食事はとても美味しくて、おかずが盛られた器は全て悟さんの手作りで素敵だ。



「もう少し陶芸頑張ってみようかな。」



「じゃ、俺も参加するわ。」



へ、どういう事?



斗真は習い事とか大嫌いなはず。



「斗真、無理しなくていいよ。」



「違う。無理なんかしてない。それに愛奈夏さんが俺たちの事を本にしたいと言うからさ。その取材も兼ねてな。」



え、自分の事を話すのが大嫌いな斗真が、あり得ないんですけど。



斗真、頭でも打った?



「明日美のその間抜け面は見飽きたから。たまには明日美に合わせてやるよ。」



誉めてるのか、貶してるのか、分からない。



「明日美さん、私が斗真さんにお願いしたの。どうしても二人の事を書きたくて。」



でも、なんだか、自分をさらけ出すようで恥ずかしい。



「二人の一途な思いを本にしたいの。駄目かしら。」



駄目ではないけど、丸裸になるのが怖い。



「明日美ちゃんが羨ましいわ。斗真一筋で30年。根性ドラマみたいね。」



咲良さんのその言葉にみんなが、どっと笑った。



斗真一筋の根性ドラマね。



そう思えば、少しは気持ちも楽になる。



初恋を応援出来るのなら、引き受けてもいいかな。



斗真を見ると、優しい目で微笑んでいた。



斗真のこの笑顔をずっと見ていたい。





















< 306 / 308 >

この作品をシェア

pagetop