犬と猫…ときどき、君
う~……。
「もうヤダ。泣きそう」
男子高校生みたいな頭の中になっている自分が恥ずかしくて、頭を抱えながら、お湯をかぶる。
さっきも似たような事を言いながら、シャワーを浴びてた気がするし……。
何度も何度も溜め息をこぼしながら、もう一度髪を洗い直して。
体も洗い終えた私がゆっくりとドアを開けると、春希は小さな寝息をたてながら、ベッドの上で本当に眠っていた。
「……」
春希はさー、何で全然動揺しないの?
私だけ?
こんなにアホみたいに、緊張してるのは。
「春希ぃ……出たよー。ねぇ!」
小さくその肩を揺すると“ん~”という小さな唸り声と共に、うっすらその瞳が開く。
「シャワーどうぞ」
「おー、寝てた」
「知ってる」
「はぁ……。ねみっ」
あくびを噛み殺しながら立ち上がった春希は、やっぱりいつもと同じように、私の頭をポンポン叩くと、鞄から着替えをガサゴソ取り出して、そのままバスルームに消えて行った。
その後ろ姿を見送って、小さく溜め息を吐いた私は、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出す。
それをゆっくり体の中に流し込むと、ひんやりとした物が胸の辺りを滑り落ちていって、すごく気持ちがいい。
「はぁー……」
長い一日だった……。
ホントに。
色々あり過ぎて、頭がゴチャゴチャで。
だからこんな、男子高校生脳になってるんだ。
そうだ、そうだ。そうに決まってる。
しばらく一人でゴチャゴチャ考え込んで、結局よくわからない納得をしたあと、
「もういいや。なるようになればいい」
半ば自棄になって、髪を乾かしその言葉を口にするのと、背後のドアが“ガチャリ”という音を立てて開いたのは、ほぼ同時だった。