犬と猫…ときどき、君
春希の一言に、実験中、妙にウキウキしながら大人の男の綺麗な指で、ビーカーをかき混ぜるその姿を思い出した。
「ぷっ!!」
「……何だよ」
「子供っ!! 子供がいるっ!! あははははっ!!」
思わず噴き出してしまった私を、春希がジロリと睨む。
でも、怖くないもーん。
「だからいっつも、あんなにカショカショビーカー混ぜてんの?」
「……」
「“泡立てるな!”って言われてもやってたしねっ!! 子供ー! 可愛いー!」
お腹を抱えて笑う私に、相変わら不機嫌そうな表情を浮かべていた春希が、小さく溜め息を吐いた。
「おらっ! たらふく笑ったとこで、もう寝るぞ」
「……へ?」
「おりゃー疲れてんだよっ!!」
そう吐き捨てて電気を消して、バサッと毛布を捲り、それに包まれるように横になった春希の姿に一瞬呆気に取られてしまった。
「……」
「寝ないの?」
「……寝る」
――けど。
けれども。
さっきまでの私の緊張をどうしてくれるのさっ!!
別にいいんだけどっ。
“疲れてる”って言ったの、二回目だしねっ!!
よっぽどお疲れなんでしょうねぇー。
口には出さないイヤミを頭の中に思い浮かべて少し膨れながら、それでも仕方がないと、同じように自分のベッドに横になった。