犬と猫…ときどき、君


――真っ暗な部屋の中。

さっきから耳に届くのは、いつもの車の走る音でも、人の話し声でもなく、虫の鳴き声だけ。


何となく落ち着かなくて、モソモソと動きながら窓の方を向いて思い出した。

カーテン閉めないと。
これじゃー外から丸見えだ。

ゆっくりと起き上がった私は、ソロソロと窓に近づき、静かにカーテンを閉める。


「……」

カーテンを閉め終え、ゆっくりと振り返った私の瞳に映るのは、向こうを向いた春希の背中。

「……春希?」

さっきの様子を思い出して、もう寝ているのかもしれないと思いながらも小さく声をかけた。


「……」

もう寝ちゃったか。

少し待っても返ってこない春希からの返事に、諦めてもう一度ベッドに戻ろうと毛布に手をかけた瞬間、

「なに?」

静かな部屋に響いた、春希の声。


「まだ起きてたんだ」

「……まぁな」

そんな言葉と共にゆっくり体をこっちに向けて、上体を少し起こして頬杖を付くと、静かに私を見上げた。


「――何?」

「何でもないんだけど、ただ……」

別に用事があったわけじゃない。

ただ――……。


ただ、もう少しだけ、

一緒にいたかった。


だけど、“今”その言葉を口にしていいのかが分らない。

だって、いつもだったら平気なその言葉も、この状況だと全く違う言葉になるから。


でも、それでも――……。

「もう少しだけ、一緒にいたい」

これが、私の本音。


< 104 / 651 >

この作品をシェア

pagetop