犬と猫…ときどき、君
――真っ暗な部屋の中。
さっきから耳に届くのは、いつもの車の走る音でも、人の話し声でもなく、虫の鳴き声だけ。
何となく落ち着かなくて、モソモソと動きながら窓の方を向いて思い出した。
カーテン閉めないと。
これじゃー外から丸見えだ。
ゆっくりと起き上がった私は、ソロソロと窓に近づき、静かにカーテンを閉める。
「……」
カーテンを閉め終え、ゆっくりと振り返った私の瞳に映るのは、向こうを向いた春希の背中。
「……春希?」
さっきの様子を思い出して、もう寝ているのかもしれないと思いながらも小さく声をかけた。
「……」
もう寝ちゃったか。
少し待っても返ってこない春希からの返事に、諦めてもう一度ベッドに戻ろうと毛布に手をかけた瞬間、
「なに?」
静かな部屋に響いた、春希の声。
「まだ起きてたんだ」
「……まぁな」
そんな言葉と共にゆっくり体をこっちに向けて、上体を少し起こして頬杖を付くと、静かに私を見上げた。
「――何?」
「何でもないんだけど、ただ……」
別に用事があったわけじゃない。
ただ――……。
ただ、もう少しだけ、
一緒にいたかった。
だけど、“今”その言葉を口にしていいのかが分らない。
だって、いつもだったら平気なその言葉も、この状況だと全く違う言葉になるから。
でも、それでも――……。
「もう少しだけ、一緒にいたい」
これが、私の本音。