犬と猫…ときどき、君


二泊三日の旅行中、私はマコをはじめとする女性陣に、春希はマコに玉砕して自棄になっている篠崎君に、散々絡まれて大変だった。


“○○○じゃなかったんだぁ”だの、“××××じゃなかったの!?”だの、結局は好き勝手言われ、苦笑いを浮かべるしかない私に、

「ちゃんと言ってやれよ。どれだけ鳴かされたか」

背後から忍び寄って、耳元に唇を寄せた春希がそんな事を言うから。

「……ちょっ、バッカじゃないっ!?」

私は一人ワタワタするしかなくて、もうぐったり。


だけど――……。

「胡桃も疲れただろ? 着くまで寝てれば?」

後部座席で、困ったさん達が全員爆睡している帰りの車中、運転席でハンドルを握る春希の声は、凄く柔らかくて優しかった。

いつも私をからかう時とは、本当に大違いだ。


「平気だよ。春希こそ、運転疲れない?」

「おー、全然平気。運転好きだし」

言葉通り、とても楽しそうにハンドルを握る横顔を眺める私に、チラリと視線を送ったあと、

「またどっか行こうな」

赤信号で車が止まった瞬間、その形のいい唇で私の唇をそっと塞いだ。


――驚く程の甘い時間を、あなたは本当にたくさんくれたんだ。


思い出すだけで胸がしめつけられるような、甘くて幸せで、とっても優しい時間を――……。



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