犬と猫…ときどき、君
気付けば大学に入って五度目の春を迎え、獣医学部の仲間は残り、畜産学部のほとんどの仲間たちは、四年の学士課程を終えて卒業していった。
「やっぱ淋しいなぁー」
桜の花弁が舞い散るグラウンドで、やる気なさげに、パックのイチゴミルクをチューチュー吸いがら、春希がポツリと口を開いた。
「ホントだねー……。でも“篠崎軍団”はほぼ全員残ってるんだから、まだいいじゃん」
「まーなぁ」
「私なんて、マコもユウコもいなくなっちゃったし……」
「お前、友達少ないもんな」
クスクスと笑いながら、わざとらしくそう言った春希の肩の辺りをバシッと叩く。
目の前で、いつの間にかハマってしまったソフトボールを楽しむ仲間たちを眺めながら、私は小さな溜め息をこぼした。
「マコは同じ県内だけど、やっぱ社会人だと時間違うだろうしさ」
「椎名、動物病院勤務なんだろ?」
「うん。検査技師しながら、アニテクするって」
「そっかー……」
春希のその一言と同時に、巻き上がった強い風。
青い空に舞い上がるピンク色の花弁に、瞳を奪われた――その時だった。
「あのぉー……」
背後から聞こえた、小さな声。
ゆっくりと振り返った先には、風で舞う、肩より少し長めの黒髪を押さえながらにっこりと笑う“ぶりっ子・しーチャン”の姿があった。
「四年の松元詩織っていいます! 私、ソフトボール愛好会に入りたいんですけど!」
「――え?」
急に背後に現れた事と、それに……彼女の口をついて出た言葉に驚いて、言葉に詰まった。
そんな私に一瞬視線を送った後、すぐに春希に視線を移し、
「入れえてもらえませんか?」
小さな手で春希のシャツを掴み、上目遣いで、そう口にしたのだ。