犬と猫…ときどき、君


例えば、少し肌寒いある日。

遅れてやって来た“しーチャン”は、何故か服の上に白衣を羽織っていた。


「あれ? どうしたのー?」

その問い掛けに……

「ちょっとお腹が痛くってぇ。でもコート持って来てなかったんで! 取りあえず、これで代用です! 温かぁい!」

そう言いながら“うっかりさん”な笑顔を浮かべ、その身体には少し大きい、ダボダボの白衣の袖を、パタパタと揺らしてみる。


それにデローン?(トローン?)……よくわからないけど、とにかくそんな表情を浮かべ、我先にと自分のパーカーやらジャケットやらを差し出す男性陣。


「バッカじゃない!? 白衣なんか羽織っても、寒さしのげねぇよ!!」

サキのその一言に、怒り過ぎだと思いつつも、やっぱり同感。


そしてまた、別のある日には――……


「ちょっと歩くっつってただろうがぁ!!」

少し離れたグラウンドまで歩いて行くと言ったのにも関わらず、彼女が履いて来たのはピンヒールのミュール。

しかも、みんながジャージで移動する中、彼女はラブリーなミニスカとニーハイソックス着用で、70'sな装い。


もちろん冒頭の一言は、靴ずれで“ごめんなさぁい”と、涙ぐむしーチャンと、そのおみ足を心配そうに覗き込む、男性陣にかけられたサキの言葉。


多分、意識してだと思われるその行動は、ぶりっ子好きの男の子にはたまらないのかもしれないけれど……。

女の子の反感を買うには、十分過ぎるんだ。

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