犬と猫…ときどき、君
「ねぇ、春希はどう思うー?」
「あー?」
「“しーチャン”」
「“どう”って?」
「サキとか……ってゆーか女の子たち、みんな辞めるとか言ってるし」
しーチャンが入ってから、少しずつ崩れ始めた、楽しい愛好会の雰囲気。
「せっかく楽しかったのになぁー……」
小さくそう呟いて溜め息をこぼす私の頭を、春希はポンポンと撫でた。
「お前が一番、面倒みてるもんな。偉い偉い」
「だって……まだあんまりよく知らないのに、噂だけで判断するの嫌だし」
そうなんだ。
みんなが“大嫌い”だの“ウザい”だの言う中、そこまでの感情が湧かない私は、気付けば女子の中で一番彼女と話しをする存在になっていた。
“話しをする”って言っても、大した話なんかしないけど……。
“今日、寒いねー”とか“打ち上げの場所、わかる?”とか、そんな程度。
彼女も彼女で、やっぱり他の女の子たちの雰囲気には気付いているみたいで。
だから尚更、私としか話さない。
かと言って、それが“懐かれてる”というワケでもないから、困っちゃうんだよね……。
好きでも嫌いでもない、ちょっと“苦手な女の子”――まさに、そんな感じ。
私だって、別にいい子ちゃんなわけじゃないけどさ。
「あの子も口下手なだけかもしれないし。だとしたら、周りに誤解される辛さが解っちゃうから……」
「……」
「私には、春希とかマコとか聡君とか、理解者がいるけど」
「……おー」
「あの子にはいないのかなぁって思ったら、昔の自分とちょっと重なっちゃうんだよね」
また溜め息をこぼして頬杖を付く私に、春希はその目を細めて、困ったように笑った。
「ホント情が深い女だよ、胡桃は」
そう言って、私の頬を撫で、
「やっぱりお前、最高だな」
今度はにっこり笑うと、私の唇に優しいキスを落としたんだ。