犬と猫…ときどき、君
研究室も、実習を受ける動物病院だって一緒。
バイトが終わって携帯を確認すると、いつも春希からメールが入っているし。
「――あははっ!」
今日だってそう。
バイトが終わってロッカールームで着替えをしながら、私は思わず笑ってしまった。
最近、春希はどうしてもバイトの関係で夜中に帰ってくる事が多いから、私のマンションで、半同棲のような形になっているんだけど……。
“今日はゲソ天ですよ。よかったね”
いつもバイト先からお土産を持って帰ってくる春希は、バイト中にも関わらず、こうして連絡を入れてくれるんだ。
「“やったぁー! ゲソ天、大好きー!!”……で、送信っと!」
笑いを噛み殺しながらメールを返信して、着替えを済ませる。
その瞬間、ピカピカと光り出した携帯。
「……あれ?」
メールじゃなくて、電話?
長すぎるバイブ音に、携帯をもう一度開いて液晶を確認すると、やっぱり着信を知らせる画像が。
その真ん中に表示されていたのは、さっきメールを返信したばかりの春希の名前だった。
「もしもし? どうしたのー?」
「知ってる」
「は?」
「ゲソ天の話」
「あぁー! あははっ!」
私の“ゲソ天、大好きー!”へのお返事か!
「それだけの為に?」
「んなワケあるかよっ! 今日早く上がれたから、胡桃ももう終わる頃かなぁと思って迎えに来た」
「ホントに!? ちょっと待ってて、今出るから!」
突然の春希のお迎えに、私は電話を切って慌ててコートを羽織ると、隣の男子用スタッフルームの扉をノックした。
「はい」
「あ! 聡君?」
私の声に、ゆっくりと開いたその扉。
「どうした? もう帰れるのか?」
夜遅いからと言って、バイトの度に家まで送ってくれる聡君が、いつもよりも格段に早い私の登場に小さく首を傾げた。
「今日、春希が迎えに来てくれたから、帰り大丈夫って言いに来た」
「そっか。じゃー帰りは一人か。……切ねーなぁ」
そんな事を言いながらも“城戸にもヨロシクな”と笑う聡君に頷いて、残っているスタッフさんに声をかけた私は、足早に出口に向かったんだ。