犬と猫…ときどき、君

「ごめん。怒っていいよ」

小さく首を振る私に、春希はそう言って、自嘲的に笑った。


「……っ」

「胡桃」

「バカじゃない!?」

「うん」

「何でわかってくれないのっ!?」

「……」

「私の気持ち、伝わってないの!?」

「ちゃんと伝わってる」

「だったらっ!!」


どうして――。


「こんなに好きなのに……っ」

「うん。俺も。だから胡桃も、言いたい事あったら、ちゃんと言って」

もう……嫌だ。
あなたは、どこまで優しいの?

私だって、勝手に不安がって、それを棚に上げて。

結局こうして、感情的になっているのに。


「胡桃は俺よりもいっぱい我慢するから、ちゃんと話してよ。まだ言いたい事あるだろ?」


私はどこまでも、あなたに甘やかされている――……。


「“松元”って……呼ばないでよ」

「うん。わかった」

それに気付きながらも、こうして胸の内を曝け出す私の頭の中には、

「春希の隣にいていいのは、私だけでしょう?」

「うん、そうだよ」

“こんなに男に懐いてる胡桃、初めて見るからさ”――聡君のその言葉が、ぼんやり浮かんで消えていった。

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