犬と猫…ときどき、君

「ホントはあの子の事、どうしても好きになれないの……っ」

「うん」

「でも春希が“偉い”って、“最高だ”って」

「ん?」

「ソフトの時、あの子と喋る私に言ったから」

「……ごめん」

その言葉に、私は大きく首を振る。


ただ、春希に見損なわれたくなかった。

“結局胡桃も、簡単に人を嫌うんだな”って、そう思われるのがイヤだった。


だから私は、彼女の事を“苦手”だと言って、いつも誤魔化していただけなんだ。


「お願い、こんな汚い私でも……嫌いにならないで」

「汚なくもないし、嫌いにもならない」

「ごめんなさい……っ」

「胡桃?」

「……うん」

優しく落とされたその言葉に、私はゆっくりと春希を見上げる。


「もっと、甘えて平気だから。俺はきっと、どうしたって、胡桃のこと嫌いになんてなれないから」

「……」

「だから、俺が困るくらいワガママ言って、甘えていいよ?」


甘い甘い、その言葉。

あなたの綺麗な瞳を、涙を溜めたまま見上げる私の唇から紡がれるのは――……


「ずっと、死ぬまで……」

「ん?」

「私だけを見て」

バカみたいに恐ろしい、そんな言葉。


だけど、それを聞いたあなたは、クスッと笑って言ったんだ。


「死ぬまででいいの?」

「……その先も、ずっと」

「了解」


こんなに懐ける人なんて、あなた以外、絶対に出逢えない。



< 137 / 651 >

この作品をシェア

pagetop