犬と猫…ときどき、君

「私もね、胡桃にその話し聞いてから、色々調べてみたんだよ。てゆーか、篠崎に調べさせたんだけど」

「……」

あぁ。ごめんね、篠崎君。


「城戸と付き合う前は、一部で噂になってたみたいだけど」

「そう……なんだ」

「でも、城戸と付き合ってからはないと思うって」

「そっか……。よかった」

マコのその言葉に、胸をホッと撫で下ろす。

噂だったとしても、私も春希も、聡君だって、そんなのいい気はしない。


「まぁ、あの性悪女の言いそうな事だよねぇ」

「んー……」

「でもさ、取りあえず気を付けてはおきなよ?」

「うん」

「それでなくても“篠崎軍団”は無駄に人気あるんだから」


“どこがいんだか”なんて、悪態を吐きながらマコは笑ってるけど……。

私は知っているんですよ。


「篠崎君、喜んでたよ」

「……」

「“やっとマコちんに、想いが通じたんだよぉー!!”って」

「アイツ……」

「ホールのど真ん中で、愛を叫んでたよ」

「シバくっ!!」

いつの間にそんな事になっていたのか。

マコは今、篠崎君と付き合っていて、すごく仲良し。


「人のこと、イチャイチャとか言えないし」

「うるさいなぁ」

唇を尖らせながら頬っぺたを少し赤くするマコが、あまりにも可愛くて、その姿を、篠崎君に見せてあげたいって思った。


――春希がいて、マコがいて、聡君がいて、篠崎君がいて。


仲がいい人なんて、数えるほどしかいないけど、それでも私は、本当に幸せだと思った。


“狭く深く”

それでいいって教えてくれたのは、誰でもない、その一番深い所にいる春希。


「お互い、幸せだね」


だから私は、あんな風に笑っていられたんだ。

それがずっと続くと……そう思っていたから。


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