犬と猫…ときどき、君

案の定、居室でパソコンをいじっていた春希にその話しをしたら、

「ふーん。どうでもいいな」

一瞬だけ顰めっ面をした後、そう言って。

「もうヤキモチ、妬いちゃダメよ?」

コーヒーを淹れようと立ち上がった私の顔を見上げ、ニヤリと笑ったんだ。


ふーん。
そういうこと言っちゃうんだ。


「さっきまで、聡君と二人っきりで実験してたんだ~」

「……」

「ヤキモチ、妬いちゃダメよ?」

「……ムカつく」

「あははっ! って、ちょっと!!」


私の仕返しに、すっかり不貞腐れた春希は、

「胡桃が悪い」

そんな言葉と共に、私の腕を掴んで自分の腕の中に引き寄せると、驚く私の唇を、その形のいい唇で無理やり塞いだ。


そして、それをゆっくりと離して、火照った顔で春希を見つめる私の背後に視線を向けて笑った。

「また怒られちゃうなぁ」

「え?」

驚いて、ガバッと振り返った視線の先には……。


「さ、聡君!!」

案の定、丸めたレポート用紙で自分の肩をポンポンと叩きながら、呆れたような表情を浮かべる、聡君が立っていた。


「お前らなぁ」

「ち、違うよっ!! 私悪くないもんっ!!」

「諦めろ胡桃。共犯だ、共犯」

“くくくっ”と楽しそうに笑う春希を、グッと睨みつける。


「怖くねぇし」

「ムカつく!!」

またくだらない言い合いを始めた私達を、始めは呆れたような表情で、黙って見ていた聡君は、「これなら安心か」と呟いて、私の頭を撫でながら、ほんの少し笑った。


「おい、イトコン!! 胡桃に触んなっ!!」

「はいはい。あ、城戸」

「はぁー?」

「培養細胞、全滅してたぞ」

「……」

「早くやり直して来い」

「くそー!! 何でだっ!!」

相変わらずな二人だけど、前よりも深くなったその関係が面白くて、私はつい、笑ってしまったんだ。

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