犬と猫…ときどき、君
さっきまで、春希一人きりだったその景色に近寄った人影。
ゆっくりと伸ばされた細い腕が、春希の首に巻き付いて――……
そっとその唇に、キスをした。
「……」
何が起きているのか、わからなかった。
パニックになるとか、驚いて心臓がバクバクするとか、そんな反応さえ出来なかった。
ただ、唯一わかったのは、そのもう一つの“人影”が――松元さんだという事。
未だに動けずにいる私の目の前で、春希の手が彼女の後頭部に添えられて、その距離が更に縮まる。
ただただ呆然と立ち尽くす私の瞳に映るのは、真っ青な空と、重なる二つの影。
不覚にも、その景色を“綺麗だ”って、そう思ってしまった。