犬と猫…ときどき、君
だけど、遠くでどこかのドアが開く音がして、それにハッとして……。
急に込み上げた、吐き気のようなムカムカした何かを抑えるように、私は口元を手で覆う。
「――っ」
そこでやっと、自分が泣いている事に気が付いた。
カタカタと震えだした指先は、寒さのせいなのか、その光景を見たせいなのか。
わからないけど、気付いたらその場から駆け出していた。
ワケもわからず縺れる足を必死に動かして……。
とにかく、その場所から離れたかった。
今更遅いのに、やっと動き出した思考。
だけど、動き出したところでそこに浮かぶのは――
“なんで?”
“どうして?”
バカみたいに、ただ同じ言葉だけなんだ。
――“春希、どうして?”