犬と猫…ときどき、君
だって、こんなのおかしい。
聡君が悪く言われる筋合いなんかない。
「大体、胡桃も胡桃だよ」
「……」
「アイツに甘え過ぎだろ」
信じられない。
一体、誰のせい?
誰のせいで、こんな事になったと思ってるの?
冷静に考えて言葉を選びたかったのに、一度そう思ったら、もう無理だった。
「春希に何が分かるの?」
「は?」
「聡君のこと、悪く言ったら許さない」
口をついて出たのその声は、自分でも驚くほど冷たくて、低い声。
「ごめん、今日は帰って。今の春希には、何を話しても無駄だと思う」
「……」
「私も一回頭の中整理したい。だから、今日は帰って」
目の前の春希は、私をじっと見据えたまま、また一つ溜め息を落とすと、
「胡桃が何を考えてるのか、全然わかんねぇよ」
小さくホツリと、そう呟いて、静かに部屋を出て行った。
「……」
一人、ソファーに座り込んだまま、自分の手の平を見つめた。
ほんの少しだけ震えるそれをギュッと握りしめた私は、ゆっくりと立ち上がって部屋を出て。
気が付いたら、あの場所に向かっていた。
春希と一緒に行った、星がたくさん降るあの丘に。
だけど……。
「なんだ。曇ってるじゃん」
見上げた空には、分厚い雲が立ち込めていて。
「これじゃー……星なんか、見えないね」
冷たくなった頬を、涙が静かに伝い落ちた。