犬と猫…ときどき、君

――……
―――……


「胡桃……っ」

あの時俺は、もう一度その名前を呼んで、あとを追い掛けようとした。

だけど、急に後ろから腕を引かれ、振り返った。


「……っ! んだよ!!」

「お前は行くなっ!!」

「あんた、何なんだよ!? 離せよ!!」

そこには、俺の腕を掴みながら、理解不能な言葉を口にする及川さんの姿があった。


「あんたに関係ないだろっ!!」

大声を上げた俺を睨みつけ、ゆっくりと周りを見回す。

そこには、俺達の言い合いを、まるで楽しむように見つめる数人の学生の姿があって……。


「ちょっと来い」

小さく舌打ちをした俺に、及川さんは低い声でそう呟いて、人気のない場所まで歩いて行った。


< 185 / 651 >

この作品をシェア

pagetop