犬と猫…ときどき、君
――……
―――……
「胡桃……っ」
あの時俺は、もう一度その名前を呼んで、あとを追い掛けようとした。
だけど、急に後ろから腕を引かれ、振り返った。
「……っ! んだよ!!」
「お前は行くなっ!!」
「あんた、何なんだよ!? 離せよ!!」
そこには、俺の腕を掴みながら、理解不能な言葉を口にする及川さんの姿があった。
「あんたに関係ないだろっ!!」
大声を上げた俺を睨みつけ、ゆっくりと周りを見回す。
そこには、俺達の言い合いを、まるで楽しむように見つめる数人の学生の姿があって……。
「ちょっと来い」
小さく舌打ちをした俺に、及川さんは低い声でそう呟いて、人気のない場所まで歩いて行った。