犬と猫…ときどき、君
延々と書き続けられていたのは、胡桃と、その周りの人間を侮辱する書き込み。
苛つき過ぎて、吐き気がする。
「大学の裏サイトだと」
「……は?」
聞き慣れないその言葉に、眉間にシワを寄せながら視線を上げる。
「根暗な奴らが、裏でくだらねぇ噂とか悪口とか言い合ってる」
「……」
「胡桃にそれが送られて来た日、あいつと一緒にいたんだよ」
じゃー……胡桃も、これを?
「こんな馬鹿げた情報源、信用したくないけどさ」
「……」
「お前、松元とかいう女と付き合ってんの?」
及川さんのその一言に、言葉に詰まって、思わず視線を逸らした。
「そっか」
「……」
「まぁ、その辺はお前の勝手だ」
そこで一旦、言葉を区切った及川さんが、次に発する言葉は、安易に想像が出来た。
「でもそれなら、これ以上胡桃に構うな」
怒るでも、責めるでもなく……。
ただ静かに、そう口にした及川さんに、俺は何も言い返すことが出来なかった。