犬と猫…ときどき、君
どうしてあの時、本当の事を話さなかったんだろう。
結局、その邪魔したのは、俺のくだらない小さなプライドと、及川さんへの大きな敗北感。
ホントにくだらない。
馬鹿げてる。
でも、あの時の俺にとって、及川さんは“脅威”以外の何者でもなくて……。
どうしても、負けたくなかったんだ。
あのサイトを見たのも、いけなかったのかもしれない。
“バカ共の戯言だ”と思っているのに、俺の心に突き刺さる、たくさんの見えない相手の言葉達。
逐一《ちくいち》、まるで監視でもされているかのような書き込みに、俺はやっと胡桃の言葉の意味を理解したんだ。
――“みんな”が見てる、というその言葉の意味を。
胡桃は一人で、ずっとこんなのを見せられてたのか。
「……くそっ!!」
どうして俺は、胡桃を信じて傍にいてやらなかった?
どうして俺は、あんな女の言うことを……。
そんな俺の気持ちを嘲笑うかのように、書き込みは延々と続けられる――……。