犬と猫…ときどき、君
その日は、新入生のクラスコンパだった。
会場は大学近くの居酒屋の、程よい大きさの締め切られた個室。
クラスの親睦を深める意味でのその会が、本当はちょっと楽しみだったのに、私はその輪の中に溶け込む事もせず――というか、出来ず。
一人、部屋の入口付近で、文字通り“息を潜めて”いた。
生まれつき喘息がひどくて、煙草の煙がない所で育てられた私。
小さい頃に比べるとだいぶ良くはなったけれど、それでもこの煙はかなりキツイ。
部屋が……真っ白、モクモク。
真っ白になった天井までの空間を、ちょっと恨めしげに睨んでも、煙は当然消えたりしない。
もうヤダ。
苦しいし、帰りたい。
多分涙目で、そんな事を思った瞬間、私の目の前に二人の男の子がヒョコッと顔を出した。
一人は、ワカメみたいなフヨフヨした茶色い髪に、人懐こそうな垂れ目の男の子。
もう一人は、黒髪で切れ長な瞳が印象的な男の子。
どうでもいいけれど、黒髪の方はアクビをしていて“無理やり連れて来られました”全開な雰囲気。
――それにしても、でっかい口。
そんな事を思いながら、つい“黒髪クン”の大きく開いた口を凝視していた私に、声をかけたのは茶髪の方だった。
「芹沢サンだっけー?」
「……うん」
会ったばかりだし、同じクラスだし、別に好き嫌いの感情なんて当然まだない。
それでも私は、つい眉を顰めてしまった。
だってその人……指に煙草を挟んで、プカプカとそれを吸いながら、目の前に顔を出したんだもん。
「俺、篠崎ー! って、あれ? 何か嫌な顔? 怒ってる?」
「……ううん」
極力息を吸いたくない私は、最低限の言葉だけを口にする。