犬と猫…ときどき、君
「ハルキさんだって、本当は不安なんでしょう?」
俺の目を真っ直ぐ見据えたまま、彼女の口をついて出たその言葉に、思わず息を呑んだ。
「だったら、試してみましょうよ」
――耳を貸すな。
「芹沢さんの本当の気持ち……確認してみましょう?」
俺には胡桃が必要で、
「ハルキさんだって、芹沢さんが、本当に必要としているのが誰なのか……」
胡桃だって、同じ気持ちのはず。
「気になってるんでしょう?」
――こいつに、何がわかるんだよ。
そう思うのに。
俺の口をついて出たのは、
「どうやって……試すんだよ」
自分が許せなくなるような、そんな最低な言葉だった。
今になって思えば、ありえないと思う。
心底、馬鹿げてると思う。
だけどあの時の俺は、時々、不安そうに手元を見つめながら、ボーっと物想いにふける胡桃の表情しか思い出せなくて……。
どうしても、胡桃を失いたくなかった。
余裕なフリをしてたけど、本当は及川さんに嫉妬して、及川さんといつも一緒にいる胡桃を、心のどこかで疑っていた。
猜疑心で一杯になった俺は、正常な判断が出来なくなっていたんだ。
俺は、胡桃が変わらず、俺だけを見ているという“確信”が欲しかった。