犬と猫…ときどき、君
「城戸先生って、何歳なんですか?」
「二十五」
「へぇー! どこの大学出てるんですか?」
その日、勤めていた病院に新しく入ってきたアニテクの女の子と交わした、何気ない会話。
それが、良くも悪くも、俺の背中を押すきっかけになった。
「G大だけど」
特に盛り上がる話題でもないし、本当に、何気ない会話だった。
――でも。
「G大だったんですか!? じゃー、芹沢胡桃先生、知ってますか!?」
「……え?」
共通の話題を見つけた事が嬉しかったのか、キラキラと目を輝かせたその子の言葉に、俺は逆に言葉を失ってしまった。
「あれ? 同期だと思ったんですけど……違いました?」
当然、俺が動揺する理由に気付くはずもない彼女は、小さく首を傾げながら眉間に少し皺を寄せる。
「いや、同期だけど。……なんであいつの事、知ってるの?」
ドクドクと、鼓動を速める心臓。
「前に務めていた病院で、一緒だったんです!」
「……へぇ」
時々、篠崎から胡桃の事を聞いてはいたけど、「芹沢のこと話すと、マコちんに怒られんだよ」と困ったように笑うから、あまり詳しい事は聞けずにいたんだ。
「あいつ、元気だった?」
動揺を覚られないように、カルテに視線を落とし、口にしたその質問。
“元気でしたよ!”とか、“一生懸命働いてましたよ!”とか、てっきり、そんな返事が返ってくると思っていた。