犬と猫…ときどき、君
「篠崎、俺やっぱり、横山先生の病院引き継ぐわ」
「マジで?」
「おー。大マジ」
「……じゃー、俺もー」
一瞬射抜くように俺を見据えた篠崎は、嫌になるくらいあっさりと、そしていつも通り楽しそうに返事をした。
だけど、ホッとしたのも束の間。
「で、何があったの?」
俺の思考を簡単に読んでしまうこの男は、ニッコリと柔らかい笑顔を浮かべる。
「お前、ホント厄介だな」
「はぁー? 春希の方が厄介だろー?」
軽口を叩いた後、俺はゆっくりと息を吐き出して、あのアニテクから聞いた話を篠崎に伝えた。
「……で?」
話しを聞き終わった篠崎の表情は、おおよそ想像通り。
胡桃も、こっちの病院に誘おうと思う」
「お前はホントに……」
そう呟いて、呆れたように溜め息を吐いたのも予想通り。
まぁ、自分でも呆れるくらいだからな。
だけどさ。
「どうしてもあいつの事、放っておけねぇんだよ」
俺はどうしても、バカみたいに頑張りすぎる胡桃が、一人で頑張らないで済むような、そんな居場所を作ってやりたかったんだ。
「どうかなぁー。芹沢、来ると思うか?」
「……多分な」
何でだろう?
だけど、わかるんだ。
――胡桃は、きっと来る。
「まぁ、いいんじゃねぇの。“オペの鬼”と呼ばれた芹沢がいたら、こっちも助かるし。……ただし!」
「“ただし”?」
「お前が自分で、芹沢に連絡しろよ?」
「……」
「そりゃそーだろ。俺は何て言って誘えばいいか、わかんねぇよ」
「……わかったよ」
「で、松元サンは? 平気なの?」
「アイツは関係ない」
“付き合ってる”。
だけどそれは、形だけ。