犬と猫…ときどき、君

「篠崎、俺やっぱり、横山先生の病院引き継ぐわ」

「マジで?」

「おー。大マジ」

「……じゃー、俺もー」

一瞬射抜くように俺を見据えた篠崎は、嫌になるくらいあっさりと、そしていつも通り楽しそうに返事をした。


だけど、ホッとしたのも束の間。

「で、何があったの?」

俺の思考を簡単に読んでしまうこの男は、ニッコリと柔らかい笑顔を浮かべる。


「お前、ホント厄介だな」

「はぁー? 春希の方が厄介だろー?」

軽口を叩いた後、俺はゆっくりと息を吐き出して、あのアニテクから聞いた話を篠崎に伝えた。


「……で?」

話しを聞き終わった篠崎の表情は、おおよそ想像通り。


胡桃も、こっちの病院に誘おうと思う」

「お前はホントに……」

そう呟いて、呆れたように溜め息を吐いたのも予想通り。

まぁ、自分でも呆れるくらいだからな。


だけどさ。

「どうしてもあいつの事、放っておけねぇんだよ」

俺はどうしても、バカみたいに頑張りすぎる胡桃が、一人で頑張らないで済むような、そんな居場所を作ってやりたかったんだ。


「どうかなぁー。芹沢、来ると思うか?」

「……多分な」

何でだろう?

だけど、わかるんだ。

――胡桃は、きっと来る。


「まぁ、いいんじゃねぇの。“オペの鬼”と呼ばれた芹沢がいたら、こっちも助かるし。……ただし!」

「“ただし”?」

「お前が自分で、芹沢に連絡しろよ?」

「……」

「そりゃそーだろ。俺は何て言って誘えばいいか、わかんねぇよ」

「……わかったよ」

「で、松元サンは? 平気なの?」

「アイツは関係ない」


“付き合ってる”。

だけどそれは、形だけ。


< 214 / 651 >

この作品をシェア

pagetop