犬と猫…ときどき、君
私は基本的に人見知りだし、今はコンタクトだけどメガネ時代から抜けない目を細めて物を見る癖のせいか、目付きも悪い。
関係ないかもしれないけれど、背も高いし。
ついでに言えば、慣れてきたら言いたい事は結構ハッキリ言っちゃうタイプ。
どちらかと言うと“可愛い”と言われる女の子とは正反対で……。
だからなのかは分からないいけれど、何故か男の子からも女の子からも、気を遣われる事が多い。
クラスでみんながあだ名とか、呼び捨てでお互いを呼び合う中、私だけ“芹沢さん”とか呼ばれたりして。
もちろん、仲がいい子は別だけど、実はちょっと、それがコンプレックスだったりもする。
それなのに、こんな私に両親が付けた名前は“くるみ”なんて可愛い名前だし。
「初めて言われた」
「へ?」
「“変な女”とか」
「……あー」
「いっつも、何でか周りのみんなに気を遣われたりするから」
「……」
「てゆーか、何故か怖がられてるのかも。さっきも篠崎君に『怒ってる?』って聞かれたし」
何故かは分からない。
でも、とにかく無意識だったことは確か。
その時私は、今まで人に話した事のない自分のコンプレックスを、目の前に立つほとんど初対面に近い城戸春希に話していたんだ。
なに……言ってるんだろう。
急に我に返ってハッとした私だったけれど、彼はそれを特に気に留める素振りもなく、閉じていた口をゆっくりと開いて、
「それはさぁ、ツンとして見えんだろ」
驚いて視線を上げる私に構わず、今までとは違う、柔かい口調でそう告げた。
「“ツン”?」
「おー。“胡桃ちゃん”、美人だから」
一瞬、からかわれてるのかと思って眉間にシワが寄った。
けれど、そんな私に向けられるのは、相変わらず真っ直ぐな黒い瞳。
「あんた美人だから、真顔でいるとツンとしてるように見えんだよ」
「……」
「だから誤解されんだろ」
「そう……なの?」
「おー、多分な」