犬と猫…ときどき、君

彼の思いもよらない一言に、私は目をパチパチ瞬かせる事しか出来ない。


じゃー、真顔でいないでいつもニコニコしてたら、もっとみんなに溶け込めるのかな?

でもそれを知ったところで、やっぱり私は人に無理やり合わせたり、無理やり笑ったりは出来ない――と言うか、したくないし。

うーん……。


こんな事を考えてるから“可愛くない女”になっちゃうんだろうなー。


一人で悶々と考えていた私の心を読んだかのように、城戸春希はその目を少し細めて、また口を開いた。


「別に、そのままでもいいんじゃんねぇの?」

「え?」

「友達なんて、広く浅く作ってもしょうがねーじゃん」

「……」

「少なくとも俺は、狭く深くの方がいいけど」

そのままちょっと前のめりになって、私の顔を覗き込む。


「私も……そう思う」

「だったら“胡桃ちゃん”は、そのままでいいんじゃん?」

フッと笑った城戸春希の言葉に、私は少し驚いた。

いや、このくらいの男の子が、そんな友情論を話してくれた事にも驚いたんだけど……。


もっと驚いたのは、自分の反応に――だ。


「“くるみ”ってね」

「へっ?」

「“くるみ”って呼ばれるの、あんまり好きじゃないの」

「……」

「可愛い名前すぎて、私に似合わないから」

訥々と告げられる私の言葉を聞いて、城戸春希は目を瞬かせながら、僅かに戸惑いの表情を浮かべている。


「でも、なんか不思議」

「“不思議”?」

「うん。城戸君に“くるみ”って呼ばれても、別に何とも思わなかった」


ただ、思った事を口にした。


< 25 / 651 >

この作品をシェア

pagetop