犬と猫…ときどき、君
彼の思いもよらない一言に、私は目をパチパチ瞬かせる事しか出来ない。
じゃー、真顔でいないでいつもニコニコしてたら、もっとみんなに溶け込めるのかな?
でもそれを知ったところで、やっぱり私は人に無理やり合わせたり、無理やり笑ったりは出来ない――と言うか、したくないし。
うーん……。
こんな事を考えてるから“可愛くない女”になっちゃうんだろうなー。
一人で悶々と考えていた私の心を読んだかのように、城戸春希はその目を少し細めて、また口を開いた。
「別に、そのままでもいいんじゃんねぇの?」
「え?」
「友達なんて、広く浅く作ってもしょうがねーじゃん」
「……」
「少なくとも俺は、狭く深くの方がいいけど」
そのままちょっと前のめりになって、私の顔を覗き込む。
「私も……そう思う」
「だったら“胡桃ちゃん”は、そのままでいいんじゃん?」
フッと笑った城戸春希の言葉に、私は少し驚いた。
いや、このくらいの男の子が、そんな友情論を話してくれた事にも驚いたんだけど……。
もっと驚いたのは、自分の反応に――だ。
「“くるみ”ってね」
「へっ?」
「“くるみ”って呼ばれるの、あんまり好きじゃないの」
「……」
「可愛い名前すぎて、私に似合わないから」
訥々と告げられる私の言葉を聞いて、城戸春希は目を瞬かせながら、僅かに戸惑いの表情を浮かべている。
「でも、なんか不思議」
「“不思議”?」
「うん。城戸君に“くるみ”って呼ばれても、別に何とも思わなかった」
ただ、思った事を口にした。