犬と猫…ときどき、君
「家、どの辺?」
イマイチ納得のいかない私を見て、ちょっと笑った彼は、突然そんな言葉を口にする。
「えっと、大学の裏のコンビニの、もっと先」
私の返事を聞くと「意外と遠いな!!」なんて言いながら、ゆっくりと歩き始めた。
「ねー、城戸君の家は?」
「俺んち?」
「うん」
私の家は、ここから大学を挟んで反対側にある。
もし彼の家がこちら側だったら、それはかなり遠回りになるって事で、すごく申し訳ない。
心配する私をチラッと見た城戸春希は、口を開きかけて一度閉じ……。
「……さぁ?」
何故か答えをはぐらかすように、期待外れな言葉を口にした。
「へっ?」
「どこでしょう?」
「いや、わかるわけないよね?」
「だろうねー」
「ねぇ、ホントに。どこ?」
「んー? 秘密ー」
だから、何それ。
「もしかして、こっち側?」
「いやー?」
「……」
「何だよ」
いつまでもノラリクラリと誤魔化し続ける城戸春希に、ちょっとだけイラッとしてしまう。
「ねー、ホントに。私、こうやって気を遣われるの苦手なの。もし城戸君の家こっち側なら、私一人で帰るから」
つい強くなってしまった語調で彼を見上げると、ちょっと困ったように溜め息を吐かれた。
「一回、店戻る」
「……今から?」
「おー」
「だったら、ウチまで行ったら時間かかるし、ここでいいよ」
そう告げた私を、何故か睨みつけた城戸春希は、下を向いて小さく舌打ちをして。
「そう言うと思った」と呟きながら、頭をガシガシと掻いた。