犬と猫…ときどき、君

――その数十分後。

やっと休憩を取れた私は、同じく、やっと休憩に入れた城戸の正面の席で、お弁当に視線を落としたまま口を開いた。


「城戸ー……」

「んー?」

「……」

「何だよ」


別に、悪い事を聞こうとしてるわけじゃないんだから、普通に聞けばいいんだよ。「連絡先教えといてー」って。


だけど、いざ本人を目の前にすると、やっぱりマコに聞いてもらえばよかったなんて、後悔する自分がいる。


「んと、さ」

「おー」

「三連休!」

「は?」

「どこ行く事にしたの?」

「……」

「えっと……」

バッと顔を上げて、何かを誤魔化すように口にしたその言葉は、無駄に早口で。


「別にどこも」

やっぱり私に松本さんとの事を話したくないらしい城戸は、スッと目を逸らして、再びカップラーメンを啜りだす。


別にいつもの事だし、ショックを受けるような事でもない。


だけど、胸の中にモヤモヤとした変な感情が芽生えてしまって……。


「――沖縄?」

気付いた時には、そう口にしてしまっていた。


「は?」

「沖縄、行くんでしょ?」

「……何で?」

「だって、松元さん行きたそうだったし! あっ! パンフレットね、見せてくれて」

「ふーん」


何だろう。

モヤモヤが、城戸の反応に、少しずつその形を変えていく。


「別に、隠すことないじゃん! まぁ確かに、沖縄に行こうがどこに行こうが、私には関係ないんだけど。でも何かあった時の為に、連絡先聞いておかないといけないから!」


モヤモヤが、ズキズキとした痛みに変わる。


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