犬と猫…ときどき、君

「あと、お前がここで泣いてる気がしたから」

「――っ」


バカじゃない?

てゆーか、バカだよ。

明日から、旅行でしょ?


「胡桃?」

「うん……」


“バカ”?

……誰が?


私、どうして普通に返事をしいてるんだろう?


「何で膨れてんだよ」

「さっき、家に行ったって言ったじゃん」

「あ?」

「ここで泣いてる気がしたなら、ここに直行してよ」

「はい?」

「襲われたら、どうしてくれんのよ」

「……」

「城戸」

「ん?」

「バカだよ……っ」


――城戸も、私も。


どうして今更、こんな気持ちにさせるんだろう。


「城戸?」

「んー?」

「明日から、旅行に行くんでしょ?」

絞り出したその声は、明らかに震えていて……。

だけど城戸は、そんな私を見て、困ったように――だけど、凄く優しく笑って言ったんだ。


< 298 / 651 >

この作品をシェア

pagetop